AI時代のクリエイターの価値とは?——Wim Hofメソッド動画制作の裏側

「こういったリサーチが秒で完成してしまう時代にこそ、そのリサーチ結果(論文)を読みこなし、それをわかりやすい形(魅力的な動画等)で伝える人の価値が一番大事になる」

これは、あるAIとの対話の中で出てきた結論だ。

情報や素材は、もはや無限に、しかも一瞬で手に入る。 しかし、その大量の「食材」をどう調理し、どんな皿に盛り付け、誰に届けるか。 その「シェフ」としての腕前——つまり**編集と演出(Direction)**の能力こそが、これからのクリエイターの聖域になる。

今回は、実際に「Wim Hofメソッド」という題材を使って、Deep Researchから完パケまでをAIと協業する「最新の動画制作ワークフロー」を公開する。


1. 武器を選ぶ:AI時代のツールキット

まずは、現代のクリエイターが持つべき「武器」を整理しよう。5年前とは景色が完全に変わっている。

【音声・音楽生成】「この世にない音」を作る

  • Suno AI: 「80s city pop」などと打つだけで、プロ並みのボーカル曲を一瞬で生成する怪物。BGMだけでなく「歌モノ」に強い。
  • ElevenLabs: ハリウッド映画のナレーションレベルの音声を生成。さらに**「Sound Effects」機能**が凄まじく、「砂利道を歩く重い足音」などのSEもテキストから生成できる。
  • Udio: Sunoのライバルで、よりハイファイで複雑な音楽構成が得意。

【素材サイト】「プロ品質」をサブスクで

  • Artlist: 現在の映像クリエイターの王道。Envato Elementsが「量」なら、Artlistは**「センスと質」**。ハズレがない。
  • Epidemic Sound: 曲のパーツ分け(ドラムだけ抜くなど)がしやすく、編集に最適。

2. ワークフローの実践ケース:『The Switch』

今回制作したのは、"Ice Man"ことヴィム・ホフの呼吸法を題材にしたショートドキュメンタリー『The Switch』。 単なる「健康法の紹介」ではなく、「体内での生理学的変化(pH上昇、アドレナリン放出)」をSFサスペンスのように描くことが狙いだ。

以下が、その制作プロセスだ。

Phase 1: Deep Research(脳みそ)

ツール:Perplexity Pro / NotebookLM

普通の脚本は書かない。「AI同士に対話」させ、それを構造の軸にする。 「Wim Hof Method molecular mechanism visualization」などのワードで論文(PDF)を収集し、NotebookLMに食わせる。

ここで重要なのは、**「Audio Overview(音声概要)」**を生成させること。 AI同士が興奮気味に「Wim Hofの科学的ヤバさ(重炭酸緩衝系の攪乱、NF-κB経路の抑制)」を語り合っている音声を、そのまま動画の構成案として使う。

Phase 2: Scripting & Voice(演技)

ツール:COEIROINK / VOICEVOX / Vrew

「ゆっくり解説」や「ずんだもん」は飽和している。 今回は**「COEIROINK(KANA)」「VOICEVOX(青山龍星、玄野武宏)」**を使い、「冷徹な科学者」と「戸惑う被験者」の会話劇を設計した。

ポイント: 長文を一気に入力せず、ワンセンテンスごとにブロックを分け、意図的な「無音(間)」を作る。 これが映画的な緊張感を生む秘訣だ。

Phase 3: Visual Gen(視覚)

ツール:Gemini (Nano Banana) + Hailuo AI / Kling

実写素材は一切使わない。 Gemini 2.5 (Flash Image) の高いプロンプト追従性を利用し、「凍りつく肺胞」「爆発するようなアドレナリン(金色の粒子)」といったマクロ視点の映像を生成。 それをHailuo AIやKlingに投げ、Image-to-Videoで「静」から「動」へ変換する。

Phase 4: Integration(統合と魔術)

ツール:DaVinci Resolve

最後に、散らばったパズルを組み立てる。

  • Voice Isolation: AI音声特有のノイズを消す。
  • Color Grading: Dehancer等で「Teal & Orange」を極端にかけ、「冷たさ」と「生命の炎」を対比させる。
  • UI/HUD: 数値データ(pH 7.4 -> 7.75, SpO2 50%)をモーショングラフィックスで可視化し、説得力を「数字」で殴る。

3. 結論:AIは「包丁」にすぎない

AIは論文を秒で要約し、画像を数秒で生成する。 しかし、「ここで視聴者をゾクッとさせよう」「ここで一瞬の間を置いて緊張感を作ろう」という**情動の設計(演出)**は、人間にしかできない。

リサーチが自動化されたからこそ、浮いた時間で我々は何をするべきか? それは、より深く「人間」を知り、より鋭く「感情」を動かすためのストーリーテリングに磨きをかけることだ。

冷たいディスプレイの向こう側にある「熱」を伝える。


永遠の未完成

「完成」なんて言葉は、死んだプロジェクトに使う言葉だ。 我々は生きている。だから、永遠に未完成だ。

AI Video Production Workspace

(↑ これが今作ってるやつ。完成してないwww)