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REPORT

チャンクコーパス 報告書と改善案

何をしたか、何がわかったか、どこを間違えたか、次に何をするか。 ブラックボックスにしないための記録です。

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01

何をしたか

英語の実テキストを12,871万語ぶん手元に集め、 任意のフレーズについて「何回出るか / どの語域で出るか / どんな場面で出るか」を その場で数えられる状態にしました。そこから覚える価値のある表現だけを抜いて順位表にしています。

語域出典語数
素の会話
演出で盛られていない話し言葉。本命
YouTube 字幕 (43ch / 1,155本)14,711,455
映像字幕
量。会話の網羅性
OpenSubtitles (OPUS)64,673,306
映画脚本
脚本の会話。やや劇的に盛られる
Cornell Movie-Dialogs 617本3,206,942
論説・講演
現代の書き言葉。ことわざと成句はここに住んでいる
News-Commentary / TED2020 / QED41,359,348
古典書籍
1890年代。現代語の証拠にはならない
Project Gutenberg 40冊4,755,285
合計128,706,336
02

わかったこと

本だけで数えると1890年のロンドンができる

名作40冊452万語で snap out of it は0件、you guys も0件。代わりに a quarter of an hour が48件、my lord が1,828件。著作権が切れている=古い、かつ本は書き言葉。二重に外れる。

snap out of it0件 (本) → 15件 (映画脚本)
you guys0件 (本) → 525件 (映画脚本)
a quarter of an hour48件 (本) → 1件 (映画脚本)

頻度順のままだと英文法が上位を占める

i don't / want to / going to / out of / to see。これは覚える対象ではなく、ネイティブとの差もここにはない。内容語の有無・端の欠け・結束度の3関門で絞る。ただし結束度は「よく出るもの」には効かせない。生涯74,441回の look at まで落としていたため。

落とした: 端が欠け79,113件
落とした: 結束が弱い73,783件
落とした: 番組固有の定型24,206件

頻度と「知っているか」は別の軸だった

necessity is the mother of invention を完全一致で引いたら8,734万語で1件。そこで死語と結論したが誤り。実際は is the mother of という型で41件生きており、かつ大人のネイティブの99%が知っている。ことわざは決まり文句という札つきで提示されるので1〜3回で定着する。頻度だけで順位をつけると、この層が最下位に沈む。

necessity is the mother of invention1件
is the mother of (型)41件
keep an eye on (比較用)1,121件
03

ことわざは会話ではなく論説に住んでいた

語域を1つ足しただけで結論がひっくり返った実測です。 古典40冊には、現代の成句が1件も入っていません。 必要は発明の母を死語と誤判定したのは、成句が住んでいる語域を持っていなかったからでした。

表現論説・講演YouTube映像字幕古典40冊
easier said than done8936500
the tip of the iceberg7717490
a double-edged sword323230
the elephant in the room262800
actions speak louder14430
necessity is the mother of invention4200

論説・講演コーパスの成句密度は映像字幕の2倍から3倍。 1つの語域だけで数えると必ず事故る、というのがこの仕組みで唯一の必須ルールです。

04

分業の原則

AIとコーパスDBは、できることが正反対です。両方を使わないと必ず失敗します。 この原則が、この仕組みの中心です。

DBがやること
  • 列挙と網羅
  • 頻度と順位
  • 存在しないことの証明
  • 出典つきの実例
  • 誰でも再現できる検証

AIは重みの塊で索引を持たないため、数え上げる対象のリストがそもそも存在しません。 列挙させると300〜600個で尽き、その先は捏造が始まります。しかも本人に見分けがつきません。

AIがやること
  • 意味の説明
  • なぜ日本人が言えないか
  • 実例40件から場面を要約
  • 顕著性の判定
  • 教材としての組み立て

頻度表は意味を持ちません。日本語との対照も数値には出ません。 数えるのは機械、意味をつけるのがAI。AIに電話帳を書かせず、電話帳を引かせる。

05

改善案

ここを上から潰していきます。効果の大きい順に並べてあります。

最優先
YouTube を1万本まで取得
母集団が10倍

列挙済み12,444本に対し取得は1,358本。残りを入れると素の会話だけで1億語を超え、いまの全コーパス合計を上回る

現代の書き言葉を足す
ことわざ層が復活

報道・論説・講演 (News-Commentary / TED / QED)。ことわざと成句が実際に生きている語域が現状ゼロ。書き言葉が1890年代しかないのが最大の穴

日本語訳をつける
商品化の必須条件

1万件に訳がない。商品として成立しない。訳はLLM側の仕事

品質
可変スロットに対応する
取りこぼしを潰す

X is the mother of Y のような型を完全一致が落とす。necessity の誤判定はこれが原因。スロット付きパターンで数える

顕著性の軸を実装
順位の妥当性

ことわざ・成句・引用は低頻度でも全員知っている。頻度と別列で持ち、並べ替えられるようにする

6語以上の取りこぼしを戻す
長い表現の充実

番組固有の決め台詞を消すため2語域以上を必須にした結果、6語が4,426件から325件に激減した。語域ごとの閾値差を補正して recall を戻す

2020年代の語域を足す
現在形の英語

OpenSubtitles v2018 は新しい語を含まない。SNS・掲示板・最近の配信

商品化
実例を各表現に焼き込む
場面つきで覚えられる

いまは corpus-search を叩かないと場面が見えない。1表現あたり実場面を3〜5本、データに持たせる

なぜ日本人が言えないかを書く
教材としての価値

日本語との対照。これはLLMにしかできない。数値の隣に置く

トレーニングに連携
実際に定着する

/api/phrases にカード化して既存の復習系に流す

終わりの提示
他社が絶対にやらない

上位N件で会話の何割を覆うかを出す。500件で22%、2000件で38%まで算出済み。残数で管理する画面にする

06

外から採点しました

ここまでの数字はすべて「何回出たか」で、これは頻度の証拠にはなりますが取りこぼしの証拠にはなりません。 自分の網を自分で評価しても、網の外は原理的に見えないためです。 そこで外部の熟語一覧(英語版ウィクショナリー、見出し語のみ)と突き合わせました。

句動詞5,149件9.0%
熟語10,217件7.5%
ことわざ920件6.6%

一見すると93%の落第です。ただしこの一覧には ab off や a cold day in july のような、 現代ではまず使われないものも大量に含まれます。 そこで落とした14,150件をすべてコーパスに投げ直し、実際の出現回数で仕分けました。

4,580件

一度も出てこない

相手側の死語。落として正しい

5,853件

文法の骨組み

have to / kind of。意図的に落としている

3,717件

本当の取りこぼし

こちらの基準でも残すべきなのに落ちていた

見つかった穴の中身

原因は1つでした。結束度(PMI)という指標で足切りしていたこと。 これは部品が珍しいほど大きく出る指標なので、構成語が普通すぎる組み合わせは、いくら共起しても数字が伸びません

look at生涯 74,441回 / 圏外だった
don't worry生涯 24,159回 / 圏外だった
back off生涯 1,482回 / 圏外だった
what's up生涯 10,840回 / 圏外だった

この表の基準は遭遇率であって結束度ではないので、 よく出るものについては足切りを免除するよう直しました。 同じことが二度起きないよう、基本表現91個の在否を毎回機械で確認しています (scripts/audit-must-have.mjs。1つでも欠けたら失格)。

07

いまの限界

  • 完全一致検索は型の変形を落とす / is the mother of のような可変部を持つ表現は部分でも引く必要がある
  • 生涯遭遇は推定値 / 1億5千万語という前提そのものが推定。順位は信用できるが絶対回数は目安
  • 映画脚本は劇的表現が濃い / snap out of it は映画4.68/M に対し素の会話0.27/M
  • YouTube字幕に自動生成が混じる / 人力字幕を優先しているが、自動のものはASR誤りを含む
  • 古典40冊は現代語の証拠にならない / 語彙が1890年代