方向の逆転 (I'm so interesting / get offensive など、する側とされる側の入れ替わり)
町で「向き」が1日逆になる。鏡が先に挨拶する。骨董品が客を鑑賞する。犬が飼い主を散歩させる。
受動態の骨折 (I was scold など)
主語が入れ替わる。「芝が私を刈った」という苦情がHOAに提出される。
冠詞の欠勤・誤出勤 (a hotels / a some kind of)
数が曖昧になる。1本のビールが6本に増え、Alder Court の家が1軒多く数えられる。
前置詞の取り違え (arrive to / the buck stops on)
接続がずれる。バスが1区画手前で曲がり、手紙が隣の家に届く。
捏造語の召喚 (tolerancy / professionality)
存在しない店が1日だけ開く。住人には買い物をした記憶だけが残る。
目的語の脱落 (I cannot use / I picked up — it が消える)
町から「それ」が消える。動詞だけが残り、住民は何かを使い、何かを拾うが、何を指しているか誰も言えない。注文票の品名欄が空のまま溜まる。
間接疑問の語順崩壊 (which your favorite comedian's など、文の中に入れた質問が壊れる)
質問が入れ子にできなくなる。「どこか知ってますか」が言えず、全員が「どこですか」としか聞けない。町中から前置きが消え、一日だけ全員がぶっきらぼうになる。
限定詞の渋滞 (a my score / a this perfect score / the my jokes — 冠詞と所有格と指示語が同席する)
所有が重複する。1つの物に持ち主が2人も3人も登記され、誰の物か確定しないまま請求書だけが人数分届く。役場の登記簿は、その日だけ二重線で埋まる。
同綴異義の取り違え・不規則動詞の捏造 (teared — 破くと涙が同じ綴りのまま両方成立する)
1つの単語が両方の意味を同時に持つ。図書館で本を破ると、本が泣く。町の誰かが「裂いた」と言うたび、その場にいた全員が少し濡れる。
類義語の渋滞 (rejuvenated / recuperated / filled up / charged — 1つの感情に語を5個積む。語彙不足ではなく語彙過剰で起きる)
1つの物事に呼び名が同時に複数つく。同じ物を同じ名前で呼べる保証が無くなり、役場は同一の1件を人数分の件数として受理する。回復した人間は1人なのに、回復は5件記録される。
句動詞の粒子の脱落 (pick up on → pick on。up が1つ落ちると「察する」が「いじめる」になる)
親切が加害として届く。褒めた相手から被害届が出て、様式は完璧なのに前例が無い。町の善意は、その日だけ1粒ぶん足りない。
存在文の崩壊 (there's a wall → it's very so wall。「〜がある」が言えず It's で始まる)
町から「ある」という申告が消える。物は全部そこにあるのに、あると宣言できない。棚の在庫は目の前にあるが帳簿には載らず、住民は指を差すことしかできない。この日、役場に提出される書類の主語欄はすべて「それ」で埋まる。
確信度の渋滞 (maybe / I think / I bet を1文に3つ積む。第78夜の処方を3つ同時に実行して起きる)
1つの事実に確信度が同時に3つつく。証明書に「たぶん本物」「本物だと思う」「本物に賭ける」の3つの判が同時に押され、押されるほど誰も信じなくなる。断定と保留が同じ紙の上で殴り合う。
祈りと遊びの1音差 (pray → play。r と l の1音で、意味が正反対に反転する)
町では真剣な願いが遊技として受理される。教会に出した嘆願が、その日だけ余興の申込書として処理される。他人のための祈りは通る。**自分のための祈りだけが、遊びに化ける。**
冠詞の転職 (「___ guy」を封じた翌々日、a が skeptic / fan で欠勤する。穴が語ではなく型にある)
肩書きの前の1枚が、職場を替えて欠勤する。前日まで欠けていた欄が埋まり、かわりに隣の欄が空く。役場は「今日どこが空くか」を毎朝くじで決めることにした。
悪化と苛立ちの取り違え (exacerbate → exasperate。対策が事態を「悪化させる」と言おうとして「イライラさせる」)
町の対策がすべて対象を怒らせる。消火器は火を消さずに火の機嫌を損ね、除草剤を撒いた庭では雑草が口をきかなくなる。問題は解決も悪化もせず、**ただ全員が不機嫌になる。**
引用の頭文字化 (the be-all and the end-all → b-a-o and e-n-o。読めない決まり文句をローマ字で提出する)
町の格言が頭文字に縮む。教会の掲示板は「G is G」(God is Good)になり、Flo のレジ横の「思い立ったが吉日」は TIG の3文字になる。**意味は全員がなんとなく分かるが、誰も声に出して読めない。**
否定の二枚重ね (I don't think money is not important。強調のつもりの not が2枚並んで、主張が反転する)
町では、否定を2回言うと肯定として受理される。「要りません」と2度言った住民に品物が届き、「行きません」と2度書いた欠席届が出席簿に記録される。**いちばん強く断った人が、いちばん確実に巻き込まれる日である。**
形容詞の語順の反転 (Japanese typical name — 出身が評価より先に立つ)
町の看板と名簿で、修飾語の順番が入れ替わる。「典型的な日本の部屋」が「日本的に典型な部屋」として登記され、意味は通るのに誰も同じ物を思い浮かべられない。役場は同一の物件を2件として受理し、内見に行くと1件しか無い。
品詞の転職 (recluse を動詞にして受動態にする — 名詞が勝手に動詞になり、本人の意思が消える)
町では、自分で選んだ行動がすべて「そうさせられたこと」として記録される。隠遁した住民は世に捨てられた者として登録され、辞めた者は辞めさせられた者になる。**申告書の意思欄が、その日だけ受動態でしか書けない。**
相手の不在 (enjoy の目的語が3夜連続で落ちる — 楽しんだ人も、楽しんだ対象も現れない)
町に楽しさだけが漂い、楽しんだ本人が見つからない。笑い声は記録されるが、誰の口から出たかは特定されない。祭りの参加者名簿は空欄のまま提出され、Flo は「楽しかった人が誰も来ていない」と苦情を出す。**祭りは、確かに開かれている。**
1音差による意味の反転 (work→walk / kill→cure / live→leave。音は隣、意味は正反対)
町では、すべての語が隣の語と入れ替わりうる。入れ替わった語は、たいてい元の語の反対である。働きに出た者は歩いて帰り、治すはずの処方が止めにかかり、出て行きたがる者と住みたがる者が同じ言葉で記録される。**その日、誰も嘘をついていないのに、誰の話も逆に伝わる。**
訛り (running → rusting など音の滑り)
町の音が半音ずれる。教会の鐘、Flo の呼び鈴、Brandon Lee のハイC。
誤りゼロの夜
快晴。町は静かで、動物園は暇で、誰かが少し寂しい。終末条項の予行演習である。
代名詞の取り違え (he と she を往復する。しかも擁護している相手に対してだけ起きる)
町では、指し示された相手に言葉が届かない。名指しは隣の席へ配達され、呼ばれた人は自分だと気づかず、褒められた人は最後まで褒められたことを知らない。**その日、悪口だけが正確に本人に届く。**
使役の make に to が入る (I made Gemini to create — 「させる」の形が崩れる)
町では、頼まれた仕事が頼まれる前に終わっている。役場には「まだ言っていないのに納品された」という届出が並び、誰が言い出したのか誰も証明できない。**その日の手柄は、全部いちばん最後に口を開いた人のものになる。**
職と人の同一化 (I am a construction — 業界名がそのまま人になる)
町では、住民の名前が一日だけ職業に置き換わる。役場の名簿から固有名詞が消え、「建設」「配管」「保険」が並ぶ。家族は誰が誰か分かるが、書類のほうは分からない。
決まり文句の前半脱落 (stuck between a rock and a hard place → rock and hard places)
町のことわざが後半だけになる。教会の掲示板は「と硬い場所」とだけ書かれ、意味は住民の記憶の中にしか残らない。
固有名詞への冠詞の配達 (This is a Como / near the Milan / like a Boris Johnson — 名前があるものに「どれのことか」の札を貼る)
町では、一つしかないものが一つであることを証明させられる。地名と人名に「ひとつの」が付き、Ridgeway 通りは「ある一つの Ridgeway 通り」として登記される。住民は自分の名前を名乗るたびに、他にも自分がいる可能性を役場から確認される。**そして同じ日、名前を持たない物からは冠詞が消え、椅子も皿も鍵も、数を失って棚に並ぶ。**
意見のときだけ1文が終わらない (音読では8分間無傷なのに、「どう思う?」の直後に1文が90秒になる)
町では、朗読しているあいだだけ全員が完璧に喋る。**新聞を読み上げる者、掲示を読む者、レシピを読む者 — 一人も言い間違えない。** ところが「あなたはどう思いますか」と聞かれた住民は、その場から**句点を失う。** 話は続き、内容は正しく、そして終わらない。**役場は本日、意見聴取の欄を「5行以内」と印刷し直した。5つに割れば全員が言える、と分かっているからである。**
数字だけが読めない (文法の事故ゼロの8分で、1.13 と 80 と 2015 だけが3回止まる)
町では、文字は読めるのに数字が読めない。**値札、番地、時刻表、体温 — すべて目には入っているのに、口に出すと桁が入れ替わる。** 18番地の住民が80番地に配達を受け取り、1.13 メートルの梁が113本届く。**綴りの読める者が数字で止まるので、住民は「数字は別の言語である」という結論に達した。本日、町は数を指で示すことにしている。**
1音の取り違えで、崩れたほうが真実になる (read between the lines → between the lies。行が嘘になり、その夜の主題に一致してしまう)
町では、言い間違いのほうが正しい。**訂正された発言は記録から外され、最初に出た誤りが議事録に残る。** 「行間を読め」と書かれた掲示は、朝には「嘘のあいだを読め」に変わっており、住民はそちらのほうを読んでいる。**誰も直さない。直すと意味が通らなくなるからである。** 本日、Devon の朝刊は誤植のまま配られ、購読者から一件の苦情も来ていない。
罪状と犯人の同一化 (felony と felon。行為がそのまま人になる)
町では、罪がそのまま人として登記される。役場の名簿に「窃盗」「詐欺」「重罪」という名前の住民が現れ、家族構成の欄には被害額が入る。**判決文は履歴書として受理され、刑期は勤続年数として数えられる。** 誰かが罪を犯すたび、町の人口が1人増える。
形容詞が数えられるようになる (a devious / a possible / a amazing / a epic — 「どんな」に冠詞が付く)
町では、性質が数えられる。「ひとつの素晴らしい」「ふたつの可能な」が在庫として棚に並び、Ray の骨董店は「一個の腹黒い」を仕入れて値札を付けた。**買った住民は、家に持ち帰ってから、それが物ではなく形容だったことに気づく。** 返品は受け付けられている。品物が最初から無いためである。
直した部品が25分しか持たない (開幕に自力で直した存在文が、締めで同じ形で崩れる)
町のあらゆる修理に、25分の保証期間がつく。**朝いちばんに直された蛇口、直された門、直された言い間違い — すべて正しく直り、正しく動き、25分後に元に戻る。** 修理工は無能ではない。むしろ全員が有能で、直せることは毎朝証明されている。**本日、町が学んだのは「直せる」と「直った」が別の言葉だということだけである。**
完成した語への語尾の増設 (truth に -ness を足す — 既に名詞であるものを、もう一度名詞にする)
町では、完成しているものに部品がもう一つ付く。仕上がった椅子に脚が5本目として届き、閉まった扉にもう一枚の扉が取り付けられる。**受け取った住民は「これで本当に完成したのか」と聞くが、届けた側も答えられない。** 増設された部分は、翌朝には静かに外れている。